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発達障害支援

2017.06.13 【セミナーレポート】

ジャパンライム主催セミナー
アナログゲーム療育


6月11日に松本太一先生をお招きして、「アナログゲーム療育」セミナーを開催いたしました。
アナログゲーム療育は、松本先生が放課後等デイサービス指導員時代に開発されたもので、 100種類以上の多様なゲームからその子どもにあったゲームを選び、 子ども同士の関わりを通じて、実践的なコミュニケーション能力を身につけてもらうことを目的としています。
過去のセミナーアンケートでも是非講演をきいてみたい!という声をいただいており、いま注目を集めている内容です。


**アナログゲーム療育の4ステージ**

  • 松本太一
アナログゲーム療育は、心理学者ジャン・ピアジェの
認知発達段階論をもとに、
療育で用いるゲームをステージ分けしています。

ステージ1 1歳半~3歳
ステージ2 3歳~7歳
ステージ3 7歳~12歳
ステージ4 12歳以降

今回の講演では、ステージ1~ステージ3のゲームを解説していただき、
ステージ4のゲームも紹介をしていただきました。

アナログゲーム療育については、
松本先生のサイトにて詳しく記載されております。
http://www.gameryouiku.com/


**ステージ1のゲーム**

ステージ1では、色や数等のシンボルの存在に気付くことと、物に名前があることに気付くことが指導目標となります。 事例やゲームの紹介を交えて解説していただきました。 このステージでのゲーム自体は簡単ですが、1対1を基本として丁寧な指導が必要となります。 そういった細かい点も具体的に示していただいたので、子どもたちをイメージしながらお話を聴くことができ、 理解しやすかった、という声もアンケートでいくつか見られました。

**ステージ2のゲーム**

ステージ2では、言葉や数の理解を深め、さらにルールを守り集団参加を果たすことが指導目標となります。 ここからは受講者の皆さんにも実際にいくつかゲームを体験してもらい、楽しく学んでいただきました。

アナログゲーム療育
アナログゲーム療育


**ステージ3のゲーム**

ステージ3では、客観的思考の形成と他者視点の獲得が指導目標となります。
ゲームも少し複雑になり、選択の要素が出てきます。 その際に重要なのはその場のルールや状況にあわせて行動ができる、ということです。
まず、客観的思考の形成という観点から「ファイアドラゴン」を体験していただきました。 ファイアドラゴンはルビーのカラカラっという音やそのビジュアルから子どもたちに大変人気のあるゲームです。

アナログゲーム療育
アナログゲーム療育

次に、他者視点の獲得という観点から「わたしはだあれ?」と「ヒットマンガ」を体験していただきました。 これらのゲームは、コミュニケーションの行き違いをきっかけに、他者視点の違いに気づき、 どうやったら伝わるのかを子ども自身に考えさせ、実行させることが目的です。 また、わかりあえなかったことがわかりあえたことで、コミュニケーションの自信につながります。
大人でも楽しめるゲームですので、今回の講演でも大変盛り上がりました。 ただ、子ども自身に考えさせるだけでは上手くいかないこともありますので、 その場合には問いかけを中心にして指導することも必要です。

アナログゲーム療育

**心理面へのアプローチ**

これまで紹介してきたゲームはどれも楽しく遊べるものですが、 実際の現場では、ゲームに参加してくれない等、うまくいかないことがあります。 その場合はどのようにすれば良いでしょうか。 ゲームに参加しない子に対しては、無理に参加を促すのではなく、見た目に興味をひきやすいゲームをみてもらい、 改めて参加を促してみることで、参加へのハードルが下がります。
そこでおすすめのゲームとして紹介されたのが「キャプテン・リノ」
カードをタワーのようにどんどん積みあげていくゲームで、 積み上げられたカードが崩れ落ちるときには、各テーブルで「ああああー!」という声がきかれ、大変盛り上がりました。

アナログゲーム療育

**ステージ4のゲーム**

ステージ4では、相手や場の状況に合わせた臨機応変な対応が指導目標となります。 この講演では紹介のみとなりましたが、計画的に行動する「街コロ」や、交渉する「カタン」など、 戦略的なゲームが登場してきました。動画でのご紹介でしたが、皆さん興味深くみられていたようでした。


参加者の方の感想(一部抜粋)

・各ステージの状態像、指導のポイントがわかりやすく解説されていたので、 「あの子にはこのゲームが使えそうだな」と具体的な場面を思い浮かべる事ができました。早速購入してやってみようと思います。
・療育方法として大変参考になりました。ちょっとした言葉がけにより発達段階により刺激を与える重要性を再確認させられた
・各ステージの発達課題と指導方法など具体的に学ぶことができました。ゲームをたくさん体験できたことが、先生のお話のより深い理解へとつながったと感じました。
・長時間でしたが、講義とゲームの構成だったので、楽しく集中して受講することができました。特にうまくいかない場合の具体的な声掛けの仕方が参考になりました。
・具体的なお話、実際に体験してみての講座、とても楽しかったです。子どもたちの顔を思い浮かべて どんな風に活用しようかと考えながら参加できました。たくさん欲しいゲームがあって困っています。少しずつやってみたいと思います。子どもにあったゲームをさがします!

2017.05.26 【セミナーレポート】

ジャパンライム主催セミナー
発達障害の理解と対応


4月29日30日と2日間にわたり、小児科医の平岩幹男先生をお招きして、 発達障害の理解と、将来の自立に向けての対応、トレーニング方法などをお話しいただきました。
29日は未就学児編、30日は学童期~思春期~青年期編で構成し、内容の濃い講演となりました。 保護者の方を中心に多くのご参加をいただき、両日ともほぼ満席となりました。


**29日開催「未就学児編」**

子どもの時間はたった20年、そこでできることをしないと50年それを背負って生きることになる。
最初の6年にできることとは?
冒頭、このようなスライドから講演が始まりました。
この2日間を通して強調されていたことは、現在抱えている問題への対応だけでなく、 将来どのようにして自立させるか、長期的な目標を立て、焦らずに、少しずつできることを増やす、ことでした。

■診断と検査
診断がすべてではなく、診断があってもなくても困りごとがあれば対応が必要であって、 医師は診断よりもどのように対応すべきかを伝えることが大事だとお話しされていました。 特に強調されていたのは、「ただ様子をみましょう といった具体性のない言葉はNG」
実際の生活上の問題と、将来の目標に向けた具体的な対応こそが必要なのです。

■自閉症スペクトラム障害
一番の問題は自閉症という言葉のイメージでひとくくりにしてしまうことだそうです。 自閉症の子どもは一人ひとり違い、早期療育によって改善する可能性もあります。 ここでも将来での自立を見据えて目標を立てることの重要性についてお話されました。

■注意欠陥(欠如)多動性障害
安易にADHDだ、と思ってしまいがちですが、この時期に多動や不注意の症状はふつうにみられることで、 児童虐待などそのほかの原因でも似た症状がでるため、診断は慎重に行うべき、だとお話されました。

■家庭でできること
目合わせ、指さし、タッチ、共同注視、見立て、トイレや鼻をかむ練習、 そして言葉の発達へ、段階を追って説明していただきました。 なんとなく知っていた、やっていたことでも、実際には ここまで考えて丁寧にやらなければいけないのだと痛感する内容でした。

ほめるのが大切であることは誰もが知っていることです。 しかし、ほめることもスキルであり、練習しないとうまくならないことなのです。 また、陥りやすい間違いとして、普通にできるようになるとほめなくなることや、 手伝ってできたらほめない、ことなどを挙げられていました。 これには、ハッとした方もいらっしゃるのではないでしょうか。 そして、重要なこととして「ほめることのゴールは喜びの共有であって、子どもが喜ばなければ意味がない」 ということでした。
「ほめる」ことに関してここまで深く考える機会はなかなかないと思いますが、 この講演で、その重要さを感じることができました。

■ライフスキルトレーニング
就学までに身につけておきたいスキルとそのトレーニング方法をお話いただきました。 コミュニケーション、運動、学習、それぞれについて指示の仕方や間違いやすいポイントなど 具体的に説明していただき、実際にどうすれば良いかがよくわかる内容でした。

■就学をめぐって
最後は就学の話です。就学はゴールではなくゲートですが、大きなゲートではあります。 就学先の種類やその実態は、就学前のお子さんをもつ親御さんにとっては非常に気になるところです。 どのような就学を希望し、そのためにはどうすれば良いか。 平岩先生のこれまでの経験や最近の事情をふまえ具体的なお話しをいただきました。

■さいごに
対応が職業ならその子は大勢の中の
one of them 

保護者にとっては
only one

この間のズレをどうなくすか、先生自身もいつも考えていると話します。
一人だけをみるわけにはいかない。だが、いかにして共通の意識を持つか、 その感覚は大事にしなければ上手くいかないのだとお話しいただき、この日の講演は終了となりました。

平岩幹男


**30日開催「学童期~思春期~青年期編」**

今回は自立がテーマです。そのそも自立とは何でしょうか。 それは、なんでも自分でできるようになることではなく、 基本的な生活習慣を身につけること、基本的な収入を確保することです。
なにより大切なのは、相談できる場所をなるべく多く見つけること、 そして具体的にどのようにして生活の練習をすればよいかです。

前日の復習にもなりますが、発達障害の捉え方、原因・種類についてお話しいただき、 さらに、自閉症スペクトラム障害(高機能自閉症アスペルガー症候群をメインに)、 注意欠陥(欠如)多動性障害、学習障害、薬物療法や補完代替療法などについて 一つひとつ丁寧に説明していただきました。

■教育に関わる問題
よく目にする、耳にする言葉、「合理的配慮」とはなんでしょうか。 「普通」にすることではなく、できないことがあってもできることを増やして生きていくことだとお話しされました。 また、この時期にはいじめや不登校といった問題、性の問題、メールリテラシーの問題など 様々な問題に直面します。男女それぞれについて詳しくお話しいただきました。 思春期~青年期のお話しを聴ける機会は少なく、アンケートでも好評をいただいたところです。
また、中学校、高校、専門学校、大学などそれぞれの進路について、その選び方についてお話いただきました。

■ライフスキルトレーニング
大人になるにつれて様々なことが必要となります。 この時期になって急にできるようになるわけではないので、 できることを少しずつ増やしていくことが大事であるとお話されました。

■さいごに
最後にこのような言葉で締めくくられました。

子どもは大人に向けての階段を一段一段上っています。
私たちが代わりにその階段を上ることはできません。
でも子どもが転んだり落ちないように見守ること、手伝うことはできます。
私たちにできることはそれだけなのかもしれません。
でもそれだけはちゃんとやっていきたいと思います。

平岩幹男


2日間に渡って開催された今回のセミナーは、たくさんの学びがありました。
将来について具体的にイメージができるきっかけとなったのではないでしょうか。 たくさんのご参加ありがとうございました。


参加者の方の感想(一部抜粋)

・就学に向けて出来ることが具体的だったので目標としやすかったです。また、今までしていたことが子どもの発語につながるのかわからず、やる気が出ずにやめてしまっていました。また、はじめてみようかなと思うきっかけになりました。しかることではなく、ほめること、母と子の関係をもう一度見つめ直したいです。
・具体的な対応策から制度や療育の現状など、就学関係以外にも全般的な発達障害の対応についてお話してくださり、かみくだくのに時間はかかりますが、大変勉強になりました。
・時には具体的に、時には理念的に発達障害があってもあきらめずに一つひとつ進んでいかなければならないというモチベーションが高まるすばらしい内容でした。
・自分ではわかっていると思っていたことを再確認できた。先生の話により自分が親として正しいことなのか間違っていたのか理解でき、自信ももつことができ、これから頑張っていこうとおもえた。
・色々なケース課題への対応方法が学べました。スキルだけでなく、心の持ち方も同時に伝えてくださることで前向きに子どもに向き合えると思いました。
・思春期~将来への自立を考えるのにとても参考になるお話を聞くことが出来ました。「あいさつ、保清」の大切さが就労につながるようなので実行できるように声掛けしていきたいと思います。
・子育てをするうえで、これまでの方向性で大丈夫だったか、この先どんなことが起こり得るか、具体的にとらえることができて大変勉強になりました。内容が濃くてあっという間の充実した時間でした。
・日頃から子どもを「ほめること」「スモールステップ」「シールを貼って成果を見える化すること」を心がけて働いています。先生の講演をきいて、これらが良いこと、すべきであることが分かり、明日からの仕事のモチベーションが上がりました。
・発達障害についてのセミナーは、未就学児に対するものがほとんどで、学童期⇒思春期・青年期などの将来に向けてのものがないため、とてもためになりました。将来に向けての視野を広げる良い機会になりました。
・現在抱えている学校の悩みから、少し先の思春期、そして自立するための将来にむけて大切なことがたくさん盛り込まれていたとても貴重な講演でした。あいさつ、保清はある程度できればよいと思っていたのは間違いで、きちんと身に付けさせることが本当に大切だと気づきました。そして親が年を取るまえに子どもが成人するまでのことをイメージして目標をたて、少しでもよりよい生活がおくれるよう、小さいうちから訓練していくことの大切さがわかりました。将来に対する漠然とした不安から解放され、少し将来への道筋がみえるようになりました。

2017.05.26 【セミナーレポート】

ジャパンライム主催セミナー
乳幼児期からの特別支援教育


4月9日に関西国際大学の中尾繁樹先生をお招きして、 乳幼児期のアセスメントや具体的取組の実践例、保護者との関わり方などについてご講演いただきました。
特別支援教育では、小学校以降の取り組みが重視される傾向がありますが、 心身の発達が著しい乳幼児期において、しっかりと実態を把握することが大事です。 そのためには、子どもの発達段階を理解する必要があります。
今回は、保育士や幼稚園教諭の皆様を中心にご参加いただきました。 講義メインでしたが、中尾先生の体験談などを交えて楽しく、そしてわかりやすくご講演いただきました。


**子どもの発達過程**

冒頭で、問題の未然防止の重要性についてお話いただきました。 どうしても対処療法的な対応が必要となる場面もありますが、 問題を未然に防止できれば、より良い方向に導くことができます。 そのためには、子どもの発達を知り、いま何が問題となっているのかを把握することが重要です。 逆に、発達を知らなければ問題かどうかを知ることができないのです。

ここでは、胎児期から新生児、乳幼児期まで段階を追って発達過程を説明していただきました。 そのなかで、発達における環境と個体の関係について触れられていました。 発達はその子自身だけでなく、その子を取り巻く環境、特に保護者の影響を強く受けるそうです。 日本ではお母さんを守る仕組みが不十分で、それが子どもの発達にも大きく影響しているとお話されていました。

中尾繁樹


**0歳からのアセスメント**

発達を追っていくことでいまの状況がわかります。 その時期にどのような行動をするようになるか、どのような特徴がみられるかなど ここからはさらに具体的に発達過程についてお話しいただきました。

さらに、運動の発達について掘り下げていきます。
子どもの体力・運動能力が低下していることが問題となっているなか、 二極化が進んでいるのは、我々がつくってきた現実だとお話しされました。 幼児期における運動の意義として、体力・運動能力の向上はもちろんのこと、 健康的な体の育成、意欲的な心の育成、社会適応力の発達などを挙げられました。

中尾繁樹


次に感覚・情緒の発達です。まず愛着形成についてボルビィの愛着理論をもとにお話しいただきました。 愛着形成が未発達だと感情のコントロールができないなど、様々な問題の背景となり得ます。 また、感情の背景には触感覚の問題もあります。これには最近の子育て事情も関わってきます。 最近は、子どもに触らないお母さんが増えているといいます。 それが愛着形成の問題にもつながり、さらに次の問題へと発展していく可能性があります。
最後には、言葉の遅れや行動特性などを具体的に挙げ、みるべきポイントを示していただきました。

中尾繁樹

**保護者への対応**

幼児期の母親に相談を進める際に気を付けることとして、 無理に聞き出すのではなく、話してくれる内容をしっかりと聞き、 子どもとの関わり方や今後の方針を話し合えるようにすることを挙げられました。 その際には、お母さん達が子供の将来を具体的にイメージできるように話しあい、 前向きに子どもたちの生活を支えられるような気持ちにさせることが大事だとお話いただきました。 また、具体的にこんなときはどうする?ということで、ケーススタディで良い対応例と悪い対応例をあげ、 実践的な内容で講義を進めていきました。

最後には、保護者だからできること、辛いこと、うれしいことについてお話いただき、講演は終了となりました。
三回目となりました中尾先生のセミナーですが、今回もご好評をいただき、私どもとしてもうれしく思います。 今後とも、ジャパンライムをよろしくお願いいたします。

参加者の方の感想(一部抜粋)

・具体的な例を挙げ、原因や理由、解決策を明確に提示していただけたので、とてもわかりやすく参考になりました。
・今の時代の環境と子どもの成長はつながっているということがわかりました。姿勢ってすごく大切ですねえ・・・
・乳幼児の発達(定型)から発達障害、保護者との関わり方についてとてもわかりやすく、大変勉強になりました。
・今まで障害のある子の講習等へ行ったことがありますが、今回の講習では子どもの発達、行動、背景や運動など、知らないことをたくさん教えていただきました。今までの講習会と違ってよかったです。
・支援が必要な子どもに対して保護者の理解や認知が難しいケースを経験しています。早い段階で手立てをしてあげたいけれど、なかなか進展しない現状にいま自分ができることは何か考えています。参考になりました。
・学生時代にも講義を受けたことがありますが、働きはじめてからこその気づきや自分自身の経験との重ね合わせができてよかったです。
・ちょっと気になるお子さんに対しておかあさんにお伝えする時には見通しをたててお話するという先生のお話をきいて、ただ専門機関にいってみてくださいというより親も幼稚園を信頼してくれる、本気で考えてくれると思ってくださるなあと思いました。子どもの年齢による発達状態がきちんとわかりました。


2017.05.26 【セミナーレポート】

ジャパンライム主催セミナー
不器用な子どもたちの感覚運動指導


3月19日に関西国際大学の中尾繁樹先生をお招きして、 不器用さの原因とその背景、体づくりのための感覚運動指導についてご講演いただきました。 多くの方が関心を持たれているテーマで、医療、教育、福祉と様々な方面からご参加いただき、 前回を上回る人数となりました。

今回はじめて参加される方もいらっしゃいましたので、復習をしながらより深く話を進めて頂きました。 また、運動指導ということで実技を多く取り入れた講演となり、 そのなかではグループで行なう実習もあり、大いに盛り上がりました。


**はじめに**

そもそも不器用とは何でしょうか。中尾先生は冒頭でこのように問いかけました。
「自分が不器用だと思う方、手を挙げてください」
「手を挙げた方は何を基準にして、自分を不器用だと判断しましたか?」
よく使う言葉ではありますが、不器用さについて明確な基準は定義されていません。 冒頭での質問も、それぞれの人の“標準”が基準となっており、非常に曖昧な基準です。 不器用の背景をしっかりと捉えて、解釈することが重要です。

中尾繁樹


**最近の子どもたちの様子**

前回の復習でもあります。最近の子どもたちをみていると、 「平仮名や漢字がうまく書けない」「姿勢がすぐに崩れてしまう」 「休み時間からの切り替えができにくい」「人の話が最後まで聞けずすぐ騒ぎ出す」など、 学習や規律に関する問題も見られるようになってきました。 なぜこのような問題がみられるのか、ここからその背景を探っていきます。


**感覚運動機能の問題**

感覚運動上の特徴を捉えるためには脳の機能について知る必要があります。 脳の統合機能に何らかの問題があると、感覚、運動、動作、知覚として、 その脳内のサインをうかがうことができます。 脳を直接観察することは出来ないので、感覚運動の統合はなかなかイメージしづらいですが、 デモンストレーションや具体例を通して、子どもたちを指導する先生方と、子どもたちの感覚の違いを 分かりやすく伝えていただきました。

中尾繁樹


**不器用さの原因**

不器用さの原因として様々な要因が挙げられますが、 感覚運動機能の問題では、次のようなことがあります。

①覚醒水準の問題
②巧緻運動の基盤の低下
③両側の協調性の低下
④ボディイメージが未確立
⑤視覚と運動感覚の統合が不十分

なかでも視覚と運動感覚の統合について、詳しくお話いただきました。 この問題があると、ものをイメージして考えることが苦手になり、 様々な場面で不器用さがみられるようになります。 難しい内容ですが、具体例を挙げながら分かりやすく解説していただき、 受講者の皆様も真剣に耳を傾けていました。


**具体的指導事例**

学校現場で実際に行われている取り組みや、 中尾先生が指導されているプログラムをいくつか紹介していただきました。 学校生活の中でちょっとした工夫で出来る取り組みや、 身近なものでできる活動など、参考になるものばかりです。
全員で実習しながら、理解を深めていきました。

中尾繁樹

遊びを取り入れたプログラムなので、楽しみながらでき、実習でも笑顔がみられました。 指導では、意識化した動きだとぎこちなくなり、つまづいてしまうので、 無意識化させるということも重要だと強調されていました。

中尾繁樹


**実践に役立つ具体的プログラム**

ここからは実習メインです。 まず、自分たちの体を知るために、 柔軟性やバランスのチェックしてもらいました。

中尾繁樹


そして、不器用さを改善するための活動プログラムを紹介していただきました。 できるように訓練するのではなく、遊びとして提示することがポイントです。 それと同時に、課題達成のためには意図をもって指導することも重要です。

保育所や学校ではなかなか個別指導プログラムを取り入れることは難しいですが、 今回は、グループ活動や、日常的に展開できる体づくりの活動をご紹介いただきました。 そのなかで指導のねらいや着目点、活動の展開も解説していただきましたので、 これらをサンプルとして、現場で様々な形で展開できるのではないかと思います。

中尾繁樹


「やらされているのではなく、自主的にやりたくなる。それが大事です。」と締めくくり終了となりました。
今回も多くのご参加をいただき、誠にありがとうございました。 今後ともジャパンライムをよろしくお願いいたします。


参加者の方の感想(一部抜粋)

・とても勉強になる内容ばかりで中尾先生のお話をまた聞きたいと思いました。
・今日は大変貴重なご講演ありがとうございました。実践的な動きや分かりやすい指導法もあり、本日の講演に参加でき本当によかったです。また参加したいと思うセミナーでした。
・たくさんのことを教えていただきありがとうございました。それぞれの子どもの発達にあった評価項目の整理をしていきたいと思いました。それからもう少しさりげない日常動作の中に子どもにあった課題をみつけて訓練臭さをけしてみたいと思います。
・不器用さで困っている子どもたちの指導の一端が知れておもしろかったです。タオルがあんなに便利だとは思いませんでした!
・不器用な動きは脳に非常に関係があるとの話を拝聴し、身体の動きを的確に把握していく大切さを学びました。身体を動かす楽しさと実践を通して感じ、子どもたちと遊び心を大切に、一緒に運動を行っていきたいです。
・不器用さの原因、アセスメントなどきちんと行い、楽しみながら遊びに取り入れる。まだまだ分からないことが多いですが、勉強しながらやっていきたいです。


2017.03.06 【セミナーレポート】

ジャパンライム主催セミナー
発達障害を“感覚”と“運動”の視点から捉える


2月26日に関西国際大学の中尾繁樹先生をお招きして、 発達障害や最近の子どもによく見られる問題と、その観察法について実技を交えてご講演をいただきました。 ジャパンライムでは初開催となった発達障害支援のセミナーですが、好評のうちに終了いたしました。 施設職員や教員、理学療法士、作業療法士など各方面から多くのご参加をいただき、 いまの発達障害支援には様々な方が携わっていることを実感しました。

今回のテーマである観察法では、目でみえることだけでなく、なぜそういった行動をとるのか、なぜできないのか、というように、 「なぜ」の部分が重要となります。同じ問題でも、背景によってとるべき対応は違います。今回はこの「なぜ」に関して詳しくお話しいただきました。

**はじめに**

講演の冒頭では、まず先生のご経歴と現在の研究内容についてお話いただきました。 中尾先生はとても幅広く活動をされており、現在は乳幼児からアスリートまで指導をされています。
その背景には、学生のときから学んでいた肢体不自由や、エアーズ氏のもとで学んだ感覚統合法、 そのほかにボバース、心理療法の動作法など、様々な学びをされてきたということがあります。

中尾繁樹


**特別支援教育の視点**

「特別支援教育」という言葉は知っていても、それがどういうものか、何のためなのか、 といったことをしっかりと理解できているでしょうか。 特別支援教育の本質は障害をみつけることではなく、子どもの実態をみつけることです。 子どもが何で困っているのか、なぜそういった動きをするのかを把握することで、 先に手を打つことができ、それがいじめや不登校を未然に防止することにも繋がります。

現場では色々な子どもたちを見なければならず、その子どもによって必要なこと、 目標とするところは違います。特別支援教育ではそういった視点が重要です。

中尾繁樹

「皆さんは子どもをみる視点をいくつ持っていますか?」
ここからは受講者の皆さんにもやっていただきました。 お互いに姿勢をチェックして、変だと思うところを教えるという活動を行いました。 1分間のチェックでしたが、見つけられなかったという方が意外に多いようでした。

「何が正しいのか分からないと、変なところは絶対に見つからないはずです。皆さんが見つけたところは、もしかしたら変なところではないかもしれないですよ。」

中尾繁樹

“姿勢”という、私たちにとって身近で、わかりやすい例でお話いただきました。 先ほどのチェックのように、目で見えていることをそのまま伝えることはできても、 なぜそうなっているのかを説明することができない、 つまり、どのように対応すれば良いかわからないということです。 様々な視点をもって、子どもの実態を把握することの重要性についてのお話でした。


**最近の子どもたちによく見られる問題と問題を捉える視点**

子どもたちに見られる問題とその背景についてお話いただきました。 その一つとして、子育てについて触れられていました。
子どもたちの二次的な問題を予防するために、 いま一番足りていないことは「お母さんを守る」ことなのだそうです。
子育てのなかで、例えば触過敏がある子どもに対して、 ちょっとしたトラブルがあったときにお母さんは混乱してしまいます。
そんな時に適切なアドバイスをしてあげられるシステムが必要なのです。 様子をみましょう、ではなく、こういう時はこうしてあげましょう、という具体的なアドバイスです。

中尾繁樹

続いて、鉛筆の握り方や鉄棒の握り方など、学校現場でよくみられる場面を例にして、 観察のポイントをお話いただきました。
ここでもやはり問題の背景のベースの部分を知っていることが重要であると強調されていました。 身近なことや先生の実体験を交えたお話で、受講者の方もイメージがしやすかったようです。


**発達障害によく見られる感覚運動機能の問題**

体がシャキッとしない、動きが止めれない、動きがぎこちない、 バランスが苦手、触れるのを嫌がる、人とのかかわりが苦手など 様々な問題があります。そしてその要因も様々です。

中尾繁樹

中尾先生の講義では、所々で皆さんに体を動かしてもらいます。 これはイメージを掴むためだけでなく、 体を動かすことで覚醒をあげて、話を集中して聴けるようにするためです。 退屈する暇など全くなく、午前中の2時間もあっという間に過ぎていました。


**感覚と運動の仕組み**

様々な現場をよく知る先生のお話は、受講者の皆さんにとっても現場でよく見かけることなので、 イメージがしやすく、納得もしやすいようです。 「そうそう」と頷く場面、「なるほど」とメモを取る場面、 「えぇー?!」と驚く場面など、受講者の方の反応がよくみられる、活気のある講演になりました。

中尾繁樹

決められた検査法だけでなく、遊びの中でできるチェックの仕方などもご紹介いただきました。 ここでは、ポケットに100円玉と10円玉を入れ、指示された方を見ないでポケットから出す、 という活動を3回行い、識別のチェックをしてもらいました。 感覚統合に関する内容は、普段あまり意識していないことで、難しく感じる方も多いところですが、 現場でのお話なども交えて、楽しくわかりやすく講義していただきました。

中尾繁樹


**感覚・運動機能の臨床観察法**

臨床観察でわかるのはあくまで一部分なので、組み合わせて総合的にみることが重要です。 つまり様々なチェックの仕方を知っておくと、より正確な情報を得ることができるわけです。 ここでは皆さんに、ご自身の身体をチェックしてもらいました。

中尾繁樹


**教室でできる臨床観察**

通常の臨床観察のほか、日常の遊びの中でできる観察方法もご紹介いただきました。 子どもがしっかりと指示をきいてくれる場合は、手順通りに臨床観察を進めることができますが、 実際にはなかなかうまくいかないことのほうが多いので、アレンジを加える必要があります。

中尾繁樹

受講者の方々には終始笑顔がみられ、ご満足いただけた様子で私どもも嬉しく思います。
中尾先生、受講者の皆様、ありがとうございました。

次回は感覚運動指導をテーマにご講演いただきます。


参加者の方の感想(一部抜粋)

・実際に体験することもでき、とても分かりやすかったです。
・子どもたちの動作を手掛かりにどんな特性があるか、どんな支援・対応をすればよいのか具体的に知ることができた。
・まだまだ理解できない所が多いですが、持ち帰ってよく読み返します。次回も参加させていただく予定ですので、よろしくお願いいたします。
・具体的な視点・実技も交えていて面白かった。
・非常に勉強になりました。具体的な練習方法やどの部分に重きを置いて観察をしてみたらよいかをお話いただけたので、今後の参考にさせていただきます。このようなセミナーを開催いただき、ありがとうございました。
・実際に子どもを目の前にした時に見るべきポイントをいくつか教えていただき大変勉強になりました。今後の指導に活かしていきたいです。
・中尾先生のお人柄も垣間見える、分かりやすい講義内容でした。
・大変参考になりました。実際の現場で子どもの実態を正確に捉えられるよう、実践してきたいと思います。
・具体的なことがわかって良かったです。あんなに原因がわかれているとは思わなかったです。
・子どもに見られる現象とそのみかたがわかりました。できない理由を理解し、子どもに接していこうと思います。
・見立ての方法について感覚面についての理解ができた気がします。
・観察・検査の方法がわかりやすかった。各々の検査の目的と問題が見つかった時の改善方法がセットで知りたかった。
・お話しが上手で楽しいセミナーでした。
・自分の動きをみてチェックしていくことで、どのような視点で見ればよいのか少しわかりました。
・動きによって色々な状態がわかるというのが興味深く、先生の具体的な例をあげての話を楽しく拝聴しました。産まれてからの育ちが、身体の成長に大きく影響していることがわかりました。その中でバランスの悪い障害児の子の検査をして色々な要素を統合して見ていくことの必要性を知りました。
・子どもの見取りの方法がいくつかわかってよかったです。こういう方法、それによっての指導法をたくさん知りたいです。